道端の手袋

両方揃うことはない

モンスターズ3のストーリーを語るための書

1.前書き

 

時は2023年、冬

 

故郷の村から町内会費を請求され、筆者は憤慨していた。

 

今は住んでいない旨を伝えたところでのれんに腕押し。

人間の醜さ。それは伝染し強固なものへとなっていく。

このままではいずれこの村の形をした闇より何者かが現れ、無敵の人となり人々の常識を脅かすだろう。

 

最早この魔物共との共存は不可能だと感じた筆者が民事の名の元、泣きながら村を焼いていると、いつの間にか日付が12月1日になっていた。

 

嗚呼、年末。"人"として最後の大掃除を終え帰宅しようとしたその時、消し炭となった村の中にキラリと光る「何か」が見えた。

G○Oだった建物の残骸を払いのけ手に取った「それ」は、年末の"魔物"に焼き尽くされることなく新品ありますの文字を妖しく輝かせていた。目を離すことが出来なくなった。吉兆、あるいは凶兆。

 

 

ドラゴンクエストモンスターズ3」

迷わず手に取り、帰路へついた。

 

この作品と向き合うことで、自分が"人"か"魔物"か、解る気がしたのだ。

 

 

 

 

 

本記事はDQM3のストーリーのネタバレ、また本家ドラクエ4のネタバレを含みます。

 

 

選べ!予めご了承するか、死ぬか!(とある小説家が主人公の名の権利を巡り裁判を起こし敗訴した作品の主人公並感)

______________________

 

2.本作概要とスクエニの挑戦

 

 

ドラゴンクエストモンスターズ3」

名作RPGドラゴンクエストシリーズの外伝作品にあたるモンスターズシリーズ、その正当続編である。

 

プレイヤーが闘うことは無く、モンスターを仲間に(スカウト)して戦わせる。レベルシステム等の原作から引き継いだシステムの他に、独自の「配合」というシステムが存在。仲間にしたモンスター同士を組み合わせ、新たなモンスターを作り、自分だけの最強チームを組んで頂点を目指す。

 

 

今作の主人公はドラゴンクエスト4に登場する「ピサロ」(少年期)

 

このキャラ選出は非常に挑戦的であると言える。

 

どう挑戦的なのかは、過去の主人公キャラ達との比較をしてみればお分かりいただけると思う。

 

 

ドラゴンクエストモンスターズ

ドラクエ6のパーティーキャラ「テリー」(少年期)

 

 

ドラゴンクエストモンスターズ2

オリジナルキャラ「イル&ルカ」

 

 

モンスターズ派生作である【キャラバンハート

ドラクエ7のパーティキャラ(?)「キーファ」(少年期)

 

 

モンスターズになる予定であったが技術不足で作りきれそうにないので誤魔化す為雑に別ジャンル作品に派生した【トレジャーズ】

ドラクエ11のパーティキャラの「カミュ」とその妹の「マヤ」

 

 

 

 

と、これまでモンスターズシリーズの主人公は、親しみやすい原作の味方キャラ(イルルカを除く)かつ、容姿が少年少女であることがお約束のようになっていた。

 

今作は上記にもあるこれまでの法則全てを壊している。

少年と言うには大人びて見える容姿もそうだが、そもそもこの「ピサロ」と言うキャラは、味方キャラどころか魔族の王。勇者一行の前に立ち塞がる所謂"ラスボス"である。

 

 

後述するが非常に扱いが難しいキャラでもあり過去には公式の扱いによって物議が巻き起こったこともある。

 

そのようなキャラをわざわざ主役に据えると言うのは、やはりスクエニの「挑戦心」を感じざるを得ないだろう。

 

 

さて、ストーリー解説の前にまず「ピサロ」と言うキャラについての造詣を深めなければモンスターズ3のストーリーを理解するのは難しい。

 

原作ドラゴンクエスト4に置けるピサロの生い立ち、所業と扱いを記していく。

 

_____________________

 

3.ピサロの生涯とその扱い

 

種族は魔族、好きなものはロザリーとロザリーヒルの住人、嫌いなものは人間。

なぜ徹底して人間を憎み差別しているのかという理由については作中描写が無いため定かでは無いが、その理由は我々が一番わかっているのかもしれない。


自身が長であるロザリーヒルの村の住人に対してのみ好意的な反応を示し、住人からも非常に慕われている。

 

ドラクエ4本編前~

目からルビーの涙を流すという理由で欲深い人間に襲われていたエルフを気まぐれに助け、そのエルフに「ロザリー」の名を与え、村で共に生活していた。

 

ある時、世界を統べる夢を抱いて村を飛び出したと言う話を作中聞けるが、それが本当であればピサロは一村人から魔族をまとめ上げ魔族の王に成り上がったことになり、圧倒的な強さとカリスマを持ち合わせていることがわかる。

 

 

魔族をまとめ上げた後、世界を魔族が支配すべきという理念の元に強力な力を引き出せる「進化の秘宝」の研究を続けていたがその途中、伝説の勇者が生まれたとの報せを聞き、即座に抹殺へ乗り出した。

ドラクエ4本編~

部下に世界中の子供を拉致させ、自身も手当たり次第に人間の実力者を葬っていく。

やがて勇者が住んでいる村を突き止めたピサロは、自ら村に潜入して魔物の軍勢を手引きし、勇者の故郷を燃やし村人達を次々と殺害。

勇者の幼馴染みであるシンシアがモシャス(姿を目の前の相手そっくりに変える)を唱え、勇者の身代わりとなり殺されたことで勇者を始末したと思い込んだピサロは引き上げていった。

 

 

こうして勇者の全てを奪ったピサロだが因果応報と言うべきか、自身もまた大切なものを失うことになる。


~物語終盤~

どこかに眠る地獄の帝王を呼び覚まし、迎え入れ人間を滅ぼそうと計画していたピサロ。やっとのことで見つけた直後、一足先に勇者一行に帝王は倒されてしまっていた。

うぬぬぬぬ!(魔族の王)

 

 

体勢を立直そうと拠点へ戻ったピサロの耳に、ロザリーが人間達にさらわれたと言う報せが入る。


急いで助けに向かうが人間に暴行されたロザリーの傷は深く、そのまま死亡してしまう。

 

ロザリーの願いである「人間を滅ぼす野望は捨てて」という言葉も虚しく、激昂したピサロは進化の秘宝を使用し、デスピサロへと変貌する。

もはや世界を統べる夢などかなぐり捨て、人間を滅ぼすという狂気に駆り立てられた怪物と成り果てた。

進化の秘宝の力は凄まじいが反動も大きく、記憶も人間性も失い、人間を滅ぼすという目的の為だけに生きる怪物と成り果てたピサロは、勇者一行と激突し、敗れる。

 

全ての因果の咎を背負い、燃えるような怒りに身を焦がし最期を迎えた。

 

このように、発売時の時代柄流行っていた勧善懲悪路線からの脱却を望むストーリーがドラクエ4であり、間違いなく悪でありながら悪もまた…という役割を背負うピサロであった。


~追加ストーリー~

以上が原作ストーリーであるが、PS版より追加ストーリーが導入。

その内容はとあるアイテムでロザリーを復活させ、ピサロを説得し仲間にして、共に真の黒幕と闘うというストーリーである。


上記にある通りピサロは主人公の全てを奪った宿敵であり、肩を並べて闘うことに難色を示すユーザーも多かった。ロザリーは救済され、主人公の村の人々は救済されない為被害者だけが更に損をしたよう感じたユーザーと、一度大切な人を奪われたことで僅かではあるが考えを改めたピサロを受け入れるユーザー同士で戦争が繰り広げられた。

 

ちなみにこの有名な台詞には続きがある

「だが 大切なものを失う 悲しみはわかる。一度はロザリーを失った今ならな……」

 

どう受け取るか等の話は主題がぶれるため触れないが、ここまでの文章がピサロと言うキャラを理解する一助になれば幸いだ。

 

4.そしてモンスターズへ…

 

話を戻そう。

 

モンスターズシリーズのストーリーを、ざっくりまとめる。

初代 異世界にさらわれた姉を助けるため、優勝すれば願いが叶うと言う星降りの大会の優勝を目指す

イルルカ 島の命であるマルタのへそが壊れてしまったので、様々な異世界を渡ってへその代わりを探す

キャラバンハート 異世界で出会った少年の親の命を救うため、願いが叶うオーブを集める

※トレジャーズ 異世界にとんで金かせいでたら邪魔してくるやつらがいるのでぶっとばすぺこ

※厳密にはモンスターズではない

 

と、一部を除きキチンとシナリオはあるのだがゲーム性が育成対戦に寄っている為なのかしばしばおまけ扱いを受けてきた。

 

だが、モンスターズ3では前述したピサロの知られざる過去、生い立ち等が描かれるとあってファンは騒然とした。

先行PVで明かされた事実は、これまでと違い時間軸や世界観も原作準拠にし勇者一行まで出演させる等、かなりドラクエ4に寄せた作りになっていた為、シナリオ面への反応も様々だった。

あるものは期待し、あるものは心配した。

 

そして、夜があけた!

 

 

 

 

 

 

そこで筆者が目にしたものは、誰もが想像だにしなかったとてつもないシナリオの数々だった

 

 

「なぁ雄二」

 

「聞け___________」

 

モンスターズ3、シナリオ解説本編へ続く